「…ふう」
ロックは史上最速の早業でテントを組み立て、
黙り込んでいるセリスをその中へひきずりこんだ。
ばさっ
「ほらっ!」
無造作に放られたそれは、ちいさな毛羽立った薄い毛布。
セリスは視線を落とすだけで、動かない。
『…ったくもー』
自ら放り投げたそれを、再び手に取ると、
「うわっ」
頭上から、ふわりと 落とした。
頭から流れる水滴をぬぐいながらセリスが顔を上げると、
ロックの笑顔があった。
「風邪引かれたら、足手まといだからな!」
と、ウィンク。
「…わかっている!」
その台詞に、むっとした態度をしてはみせたが、
胸の中は暖かかった。
『…あたたかい』
毛布のぬくもりだけではなく、
彼の気遣いに、そう感じた。
「久しぶりだな…」
生死の境を彷徨うわけでもなく、
誰かを疑うわけでもなく、
誰かのいのちを奪うわけでもない夜
「ん?何かいったか?」
「…何でもない…」
そういってセリスは、 目を伏せた。