サウスフィガロから洞窟を抜けて、目前には砂漠が広がっていた。
「フィガロはもうすぐだな」
「…」
帝国の「元」将軍、セリスは無言ではあったが、視線をくれて寄越した。
ロックはそれをもって肯定の合図と見なし、一歩足を前に出した。
その刹那。
頬に、ぽつんと冷たい感触。
「…雨?」
見上げた途端、周りが白く霞むくらいの豪雨が降り注いだ。
「ちょ、ここ砂漠だろー!何だよこの雨!」
喚くロックを3秒間横目で凝視して、セリスは大きな歩幅で歩き出した。
「ま、待てよ!」
既に10メートル先にいたセリスがゆっくりと振り向く。
繊細な金の髪が、濡れそぼって鈍い輝きを放つ。
「何故?」
凛とした声で、問う。
「何でって……風邪引くぞ、とか」
ふ。とセリスは嘲笑にも似た息を漏らす。
「重要では、ない。今は進むことが肝要なのだろう?」
自らの身体よりも、任務を重んじて生きてきた彼女の信念、それはあまりに頑なで。
『帝国ってきちぃな』
いつか溶かせるだろうか。
その彼女の頑なを。
雨が、堅い岩をも、 穿つように。
※旧日記からの転載ですが、今回連載の一部に取り込みました。

